子どもが体調を崩した時に訴える症状として多いのが腹痛(おなかいた)です。子どもの腹痛はよくある症状ですが、大きな病気が隠れている場合もあります。
保護者の方から見て、子どもの様子が「いつもと違う」と感じたら、お近くのかかりつけ医を受診することをおすすめします。子どもは病状の経過が早いので、重症化を防ぐためにも早期発見・早期治療が大切です。
子どもの腹痛の原因となる代表的な病気
便秘症は大人だけでなく、子どもにとっても身近な病気です。
便秘症の症状は、
・いきんでも便が出ない
・おなかが張っている
・おならがよく出る
・肛門が切れて血が出る
・1週間に1~2回しか便が出ない
などです。
また、コロコロの小さな便や軟らかい便が一日に何回も出る場合なども便秘の可能性があります。便秘が続くと腸内に便やガスが留まり腹痛や食欲低下を引き起こすリスクが高まります。そういった事を防ぐためにも、幼児期から規則正しい排便習慣を身に付けさせることが重要です。
便秘症の治療は、浣腸や便秘薬の内服が中心となります。また、便秘症の治療は長引くことが多いので、子どもがプレッシャーを感じずに無理なく継続できることが大切です。お子さんに上記の症状がみられたら、かかりつけ医に相談し、子どもの生活習慣・食事内容・体質などに合わせた治療プランを立ててもらいましょう。
感染性胃腸炎には大きく分けてウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎があります。これらにかかると、腹痛以外にも発熱、嘔吐、下痢などの症状を伴う事があります。
・ウイルス性胃腸炎
特徴としては、感染力が強くヒトからヒトへと感染を起こします。流行シーズンは主に冬季ですが、夏季にプールなどで感染が広がる場合もあります。代表的なウイルスはノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスで、治療法は整腸剤内服などの対症療法となります。
・細菌性胃腸炎
特徴としては、細菌が繁殖しやすい夏季に多く、細菌に汚染された食物(加熱が不十分な鶏肉・豚肉・牛肉・卵など)を摂取することで発症するケースが多くみられます。代表的な細菌はカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌(O157など)で、治療法は基本的に抗生物質内服による抗菌療法となります。
この通り、2つの胃腸炎は似て非なるものです。どのように対応するかで予後も変わって来ますので、より正確な診断が求められます。お子さんに上記の症状がみられた場合は、周囲の病気の流行状況、過去1週間に食べた物の情報などをできるだけ正確に収集し、かかりつけ医を受診しましょう。
腸重積とは、腸の一部が隣接する腸内にはまり込んでしまう病気で、主に生後数か月~3歳くらいまでの乳幼児に多く見られます。この病気にかかると非常に強い腹痛が生じ、言葉で痛みを伝える事が出来ない乳幼児は「いつもと違う激しい泣き方」をします。
また、病気が進行すると「イチゴゼリー状の血便」が出ることがあります。早期に診断がつけば高圧浣腸によって治りますが、発症後48時間を超えると手術となる可能性が高まります。乳幼児が突然いつもと違う激しい泣き方をし出したら、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
急性虫垂炎とは、大腸の一部である盲腸に垂れ下がった“虫垂”という部位に炎症が起こる病気です。一般的には「もうちょう」として知られており、子どもでは主に幼児以降にみられます。「上腹部の腹痛から始まり、次第に右下腹部へと痛みが移動して行く」、というのが典型的な症状となります。
病気が悪化した場合、虫垂に穴が開いて大きな手術になることもあるので、早期の診断と治療が必要です。お子さんが右下腹部に持続的な痛みを訴える場合は、早目にかかりつけ医を受診しましょう。
急性胃粘膜病炎とは、胃に炎症が起こり胃の粘膜に障害が起こる病気です。特徴的な症状は上腹部(みぞおちあたり)の突然の強い痛み、吐血、下血(黒色便)です。子どもでは主に小学生から思春期にみられます。原因はストレス、薬剤、ピロリ菌感染など様々です。
病状を悪化させないためにも、早期診断と原因の確定が重要となります。お子さんが突然みぞおちあたりに強い痛みを訴え出したら、早目にかかりつけ医を受診しましょう。
エコー検査で“より”正確な診断を
エコー検査は、放射線による被爆の心配がなく、痛みを伴わない、繰り返し実施出来る検査です。また子どもは皮下脂肪が少ないため、エコー検査で消化管(胃腸)を詳細に観察する事が出来ます。前述の「子どもの腹痛の原因となる代表的な病気」も、ほとんどの場合がエコー検査で診断がつきます。これらのことから、エコー検査は子どものおなかを診る上で有用且つ最適な検査と言えます。
南港病院 小児科 竹迫倫太郎